作品の掲載
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蔓ばらの白い花の季節
子供たちが危険な遊びをしている界隈を抜けて
丘の上の喫茶店まで…
過ぎ去ってなお褪せぬ日々を口笛で呼び戻しながら
少しばかり疲れていたのかもしれない
空の青さをこんなにも切なく愛しいと感じるのは
それでも初夏の風は
行き着くところなんてどこにもありはしないと
耳もとでささやいていく
お前と過ごした町は
きょうも
午後の日差しに明るく輝いているだろう
川のほとりにはきっと
洗いざらしのジーンズでギターを弾いている長い髪の私と
ラブソングを歌っている美しいお前がいるだろう
私は少しばかり時の流れを気にしすぎていたのかもしれない
変ってしまうことなんて何もありはしないのだと
町は静かに告げている
蔓ばらの白い花の季節
いつもの郵便屋と挨拶を交わして
私はコーヒーを飲みにいく
お前と生きた町が見える丘の上の喫茶店まで
私は熱いコーヒーを飲みにいく
子供たちが危険な遊びをしている界隈を抜けて
丘の上の喫茶店まで…
過ぎ去ってなお褪せぬ日々を口笛で呼び戻しながら
少しばかり疲れていたのかもしれない
空の青さをこんなにも切なく愛しいと感じるのは
それでも初夏の風は
行き着くところなんてどこにもありはしないと
耳もとでささやいていく
お前と過ごした町は
きょうも
午後の日差しに明るく輝いているだろう
川のほとりにはきっと
洗いざらしのジーンズでギターを弾いている長い髪の私と
ラブソングを歌っている美しいお前がいるだろう
私は少しばかり時の流れを気にしすぎていたのかもしれない
変ってしまうことなんて何もありはしないのだと
町は静かに告げている
蔓ばらの白い花の季節
いつもの郵便屋と挨拶を交わして
私はコーヒーを飲みにいく
お前と生きた町が見える丘の上の喫茶店まで
私は熱いコーヒーを飲みにいく
遠い町にはもう
春がやってきているだろう
おまえの住む町にはもう
杏の花が咲き始めているだろう
ずっと昔に暮らした
美しい町
舗装されていない道を
私たちはいつも好んで歩きつづけた
その道はつきることなく
遥かな山並みの方までつづいていた
春は雪解けの川のほとりから
山の中腹へと染めていく
おまえは花の中に座ってノートをひろげ
私のギターは風になって
おまえの歌を追いかけていく
何に惑わされることもなく
誰に咎められることもなく
私たちが恋人という名で生きられた
遠い日々
もう行くこともない時の彼方の町に
春風が吹くたび
おまえは
誰とフローラの祭を祝うのか
春がやってきているだろう
おまえの住む町にはもう
杏の花が咲き始めているだろう
ずっと昔に暮らした
美しい町
舗装されていない道を
私たちはいつも好んで歩きつづけた
その道はつきることなく
遥かな山並みの方までつづいていた
春は雪解けの川のほとりから
山の中腹へと染めていく
おまえは花の中に座ってノートをひろげ
私のギターは風になって
おまえの歌を追いかけていく
何に惑わされることもなく
誰に咎められることもなく
私たちが恋人という名で生きられた
遠い日々
もう行くこともない時の彼方の町に
春風が吹くたび
おまえは
誰とフローラの祭を祝うのか
葡萄の実をひとつぶ
口に入れて
あなたは笑った
あなたの後ろの窓は開いていて
時計塔が見えた
階下では
あなたの妹がピアノを練習していた
途切れがちなメロディーさえ
午前10時の静けさには
心地よかった
丘の上の喫茶店から
ぼくは
眼下に広がる町を眺めている
町は初秋の日差しに光り
あなたの家の赤い瓦屋根と
その傍にある
白亜の時計塔が見える
いつのまにか
いなくなってしまったあなたが
どんな暮らしをしているのか
ぼくは知らない
ただ
今になって
何気なく時を過ごしてきた
あなたの部屋の情景が
ほのかな痛みを連れてぼくの胸を通り過ぎるのだ
この店の椅子に座って
あの日のメヌエットを聞くたびに
口に入れて
あなたは笑った
あなたの後ろの窓は開いていて
時計塔が見えた
階下では
あなたの妹がピアノを練習していた
途切れがちなメロディーさえ
午前10時の静けさには
心地よかった
丘の上の喫茶店から
ぼくは
眼下に広がる町を眺めている
町は初秋の日差しに光り
あなたの家の赤い瓦屋根と
その傍にある
白亜の時計塔が見える
いつのまにか
いなくなってしまったあなたが
どんな暮らしをしているのか
ぼくは知らない
ただ
今になって
何気なく時を過ごしてきた
あなたの部屋の情景が
ほのかな痛みを連れてぼくの胸を通り過ぎるのだ
この店の椅子に座って
あの日のメヌエットを聞くたびに
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