作品の掲載

※ 作者以外の方は掲載できません。
画像位置
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。
蔓ばらの白い花の季節
子供たちが危険な遊びをしている界隈を抜けて
丘の上の喫茶店まで…
過ぎ去ってなお褪せぬ日々を口笛で呼び戻しながら

少しばかり疲れていたのかもしれない
空の青さをこんなにも切なく愛しいと感じるのは
それでも初夏の風は
行き着くところなんてどこにもありはしないと
耳もとでささやいていく

お前と過ごした町は
きょうも
午後の日差しに明るく輝いているだろう
川のほとりにはきっと
洗いざらしのジーンズでギターを弾いている長い髪の私と
ラブソングを歌っている美しいお前がいるだろう

私は少しばかり時の流れを気にしすぎていたのかもしれない
変ってしまうことなんて何もありはしないのだと
町は静かに告げている

蔓ばらの白い花の季節
いつもの郵便屋と挨拶を交わして
私はコーヒーを飲みにいく
お前と生きた町が見える丘の上の喫茶店まで
私は熱いコーヒーを飲みにいく
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:50 編集 削除
遠い町にはもう
春がやってきているだろう
おまえの住む町にはもう
杏の花が咲き始めているだろう

ずっと昔に暮らした
美しい町

舗装されていない道を
私たちはいつも好んで歩きつづけた
その道はつきることなく
遥かな山並みの方までつづいていた

春は雪解けの川のほとりから
山の中腹へと染めていく
おまえは花の中に座ってノートをひろげ
私のギターは風になって
おまえの歌を追いかけていく

何に惑わされることもなく
誰に咎められることもなく
私たちが恋人という名で生きられた
遠い日々

もう行くこともない時の彼方の町に
春風が吹くたび
おまえは
誰とフローラの祭を祝うのか
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:49 編集 削除
いつだったか
思い出せないほどの
遠い昔
ここにきたことがある

この草原に寝ころんで
いくつもいくつも
空を渡っていく
動物の形をした雲を見送っていた

初夏の風は吹き
涙拭こうともせず
抱き抱かれながら
名前呼び合ったのは
君ではなかったか


出会ったばかりの君と
手をつないで
ここから地平線に向かって
どこまでもどこまでも
歩いたことがあるような気がする

いつだったか
思い出せないほどの
遠い昔
時の彼方の町 2012/09/25(火) 15:14 編集 削除
葡萄の実をひとつぶ
口に入れて
あなたは笑った
あなたの後ろの窓は開いていて
時計塔が見えた

階下では
あなたの妹がピアノを練習していた
途切れがちなメロディーさえ
午前10時の静けさには
心地よかった

丘の上の喫茶店から
ぼくは
眼下に広がる町を眺めている
町は初秋の日差しに光り
あなたの家の赤い瓦屋根と
その傍にある
白亜の時計塔が見える

いつのまにか
いなくなってしまったあなたが
どんな暮らしをしているのか
ぼくは知らない

ただ
今になって
何気なく時を過ごしてきた
あなたの部屋の情景が
ほのかな痛みを連れてぼくの胸を通り過ぎるのだ

この店の椅子に座って
あの日のメヌエットを聞くたびに
時の彼方の町 2012/09/25(火) 14:01 編集 削除
茜色の町は
どこまでも続いていた
丘の上から
ぼくは静かな風景を見下ろしていた
黒松の林に
ときおり風が戯れていた
急がねばならぬことは
何一つなかった
ぼくは本当に君を愛していた

町のはずれには
かつて陽と砂埃にまみれたグランドが
やさしく輝いていた
手をつないで歩いた道は
林の向こうに消えていた
そのむこうには
明るい雲が浮かび
君がぼくを愛していたのかどうか
ぼくは今も知らない
時の彼方の町 2012/09/25(火) 13:56 編集 削除
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。