作品の掲載

※ 作者以外の方は掲載できません。
画像位置
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。
不安は私を旅立たせる
穢れない微笑みさえも拒絶して

霧はとても深い
心は霧のむこうの陽へと急ぐ
離反と慈愛のめまぐるしい乱反射の中を

信じたい心とは裏腹に
限りなく憎む男がいる
博愛主義の恋人は
そのとき
私にとってひとりの偽善者に過ぎない

なおも深い混沌の彼方へ
日常は名づけられぬまま
逃亡する

私たちが出会ったのはいつだったか
私たちが見つめていた荒野は

私は精一杯走る
環境よりも早く走ることで
取り戻すために

私たちの確かな足跡と
時と
そして霧の向こうの潜んでいるはずの
疑いを知らなかった私たちの顔を
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:28 編集 削除
まるでひとつの約束のように
夜が私をひとりにする
思い出してはいけない出来事が
ひとりの私を旅立たせる
ブルーグラスへあるいは一編の詩へと
いくつもの追想が
心の淵を漂い始める
スロービデオのように

私は私の眠りを古い椅子にもたせかけ
昔日のギターを鳴らしてみる
死んだ友だちの笑顔が
はっきりと蘇ってくる
ブルーベル
バイアンドバイ
オレンジブロッサムスペシャル
様々なメロディが彼の背中で鳴っている
でも
彼はもうバンジョーを弾けない

私たちとの約束を果たさなかった裏切り者
卑怯者、親不孝者
彼は純粋で優しすぎた

私は新しいボトルの封を切る
鬱陶しいほど幾度も蘇る情景に
心を込めて杯を捧げるために
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:26 編集 削除
川が流れている
私が始まったときから
私の頭の底に

取り返しのつかない過失や記憶を
映像とことばの暗いわだかまりにして

どれだけの偽りを重ねればいいのだろう

誰かが
重い流れに石のことばを投げる
そして
故里が、少女が、過去が、夢が、混沌が
身を投げる

訪れる者たちのための
一艘の船を
私はいつまで待ち続ければいいのだろう

繰り返し振り返るたび水かさが増してくる

叶えられなかった思いや
果たせなかった約束への
悔いと改悛の中に
白々しい夜明けがやってくる
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:24 編集 削除
山があり
山のむこうから雲が湧き
透明な光りを浴びて
町は明るい
鐘が鳴り
静かなざわめきが聞こえ
歌を
寡黙な私のことばを
誰が聞くだろう

時はゆっくりと過ぎていく
きらめくポプラの木々に
初秋の空に
憧れ続ける孤独の心に
道があり
誰も歩かない通い道に
穏やかな午前と
やさしい光とがあって

昨日さよならを告げた
私の自由な思いは
遥かに燃え立つ
紅葉の尾根を駆けていく
いつか
愛する人と行った
寒霞渓の紅葉の尾根を駆けていく
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:23 編集 削除

それはいつでもない
今この時
それはどこでもなく
この燕麦実る平原に私は立っていた
独りぼっちで

はるかな山の集落では
出会うことのない娘が味噌汁を温めていた
幼い弟のために

忘れてきたものは
父親の古い懐中時計だったか
それとも
おもちゃ箱にしまわれたぬいぐるみの熊だったか

歳月は
親しいものたちを様々な道へと誘っていく
ここから彼方へ
また彼方からここへと

掟のように隔てられた人生と人生の
孤独な絆に私は思いを馳せ
私は振り返る

それは
いつでもない
今この時
はるかな海辺の町では
出会うことのない青年が網を干していた
友達の歌を聞きながら
あした
見知らぬ山の集落の
娘が食べる魚を採るために
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:18 編集 削除
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。