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君がどこかの町で生きているということ
僕がこの町に戻って生きているということ
君が知らない人と幸せに暮らしているということ
僕が愛する人と暮らしているということ
どれだけの歳月が流れたのだろう
あれから・・・・
新しい歌手が生まれ
古い画家が死に

約束が誠の心の絆ならば
結び合った指と指で
どうして永遠を誓わなかったのか

春の宵の公園には
新しい僕たちが語らい
昔の僕たちは
もう肩を並べて同じ日常を見つめることはない
それでも
僕たちはやっぱり生きていくだろう
お互いの人生を
お互いの知らないままに
ときおり
果たせなかった約束を思い出したりもして
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:55 編集 削除
窓を濡らし嘆くように
思い出を濡らし掻き消すように
激しい雨が降る

まもなく
あの人は花嫁となるだろう
私の胸にすべての「わたしたち」を置き去りにして
あの人は
私と出会う前のあの人に戻って
白い花嫁衣裳を着るだろう
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:54 編集 削除

窓の外では
雪が降っている
部屋の中には
暖かなストーブが燃えている
イーゼルに立てかけられた
未完の絵
おまえのほほえみは
塗り込められたまま
もう
時の流れに惑わされたりはしない

少しばかり模様替えした部屋で
私はブランデーを温めている
キャンバスの中のおまえと
差し向かいで
春の日なたの匂いのする
思い出を肴に

今宵
あの町にもきっと
雪が降っているだろう
おまえは昔のように
カーテンの隙間から顔を出して
ゆき…ネ と
つぶやいているだろう
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:54 編集 削除
窓から西日が射している
お前は毛糸をたぐりながら
一日を編んでいる
あさぎ色のセーターの形に

はるかな山並みは
藍色のシルエットになっている
私はギターを弾きながら
時間を紡いでいる
いつまでも
こんな夕方があればいいと思いつつ

おまえの頬をオレンジの夕日が染めている
肩にかかる長い髪
結ばれた美しいくちびる

いろんなことがあって
おまえはそれでも
私の部屋の椅子に座っている
おまえはそのときまだ二十一
そして私はそのときまだ二十三
無責任で
それほど深い暮しも考えなかった頃

窓からは西日が射し込んでいる
私たちの恋の名残は
椅子の背に掛けられたセーターに
昔日のほのかな陽だまりをつくっている
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:53 編集 削除
さよならは
船着場のあたりに捨てられて
それから
私は旅に出た
夕方の空はとても美しく晴れていて
私はそのとき
すべての私を捨ててもいいと思った

さよならは
展望台のベンチの脇に捨てられて
それから
きっと何人かの少女に拾われただろう
私の旅はまだ終わらない
夏が去れば
海は本当の顔を取り戻す

さよならは
道端の草叢に捨てられて
それは
ほんとうはありえないことだと
それでも
さよならはいつまでもいつまでもと
つぶやきつづけている

私は何を探しているのだろうと
ふと思うことがある
何も探さないことを探しているのかもしれないと
ふと思うことがある

あなたがさよならと言う前の町は
今は無いのに
そして
見知らぬ町は
いつも
あなたがさよならと言う前の町なのに
時の彼方の町 2012/09/25(火) 17:51 編集 削除
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