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少女は女に変わっていく
一歩一歩階段を上るように

少年は男に変わっていく
行き止まりに出会うたび

でも
少女は
いつまでも少女のまま
男の心に生き続けている

おとなになっていく少女を見るたび
少年の心は
少しずつ傷ついていく

そして
男は粗野になる
男にはそれが悲しい
女にはそれがわからない
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 14:07 編集 削除
机の上に君の遺書があり
日が当たってとても穏やかな午前10時
ブルーグラスが聞こえるビルの窓に
ゆれているレースのカーテン

君とぼくのほんの一握りの付き合いを
時間の川から掬い上げて
一冊のスケッチブックに描き残そう

できるだけやさしく
できるだけ鮮やかに

君が死んだ時刻に
ぼくはヒルビリーの夢を見ていた
そして君の馬鹿げた苦悩を思いながらも
ぼくは十分初夏の美しさを楽しんでいた

フィドルとバンジョーと
青い空

テーブルに向かって
ぼくはグレープフルーツにナイフを入れる
その一瞬の香りにさえ敵うことなく
君の人生哲学は崩れ
君の遺書の断片は
マンハッタンの風に千々に舞い散るのだ
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:57 編集 削除
どこからかやってきて
この大地に立ち
どこからかやってきたおまえと出会い
束の間の時を重ね
どこかへと帰っていく

些細な企みは破れ
些細な企みは叶って
私たちの中に刻むそれぞれの人生は
この無辺の時の流れに
何の意味を持つのだろう

かりそめの人の姿に欺瞞と懺悔はめぐり
二十余年

己が内なる海は荒れて
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:54 編集 削除
蒼い馬は
インクの切れた万年筆の中にいた
百日紅のとめどなく舞い散る石段で
子供たちは明日のことについて考えていた

私はかつて
夕日に向かって
どこまでも駆けたことがあったのだろうか

夕方の鐘が鳴って
スケッチブックの道には
いつまで待っても人が通らなかった

妙に淋しい風も吹いて
蒼い馬は残照の中で
静かにうなだれていた
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:53 編集 削除
曇り空の下
街は色あせ
人生は何も語らぬ
嘘っぱち

笑い叫び
死んでいった精神病院
鉄格子の四角い空

待っていたんだよ
お嬢さん
冬のバス停
吹きっさらしの舗道橋

コートの襟立てて
顔をあげれば
歳末大売出しの幟が
ばたばた鳴っている

あしたぼくはここを出るよ
だから一輪
最後のバラを
胸に飾っておくれ
置き去りにしたもの 2012/09/25(火) 13:52 編集 削除
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